はなり亭で会いましょう4

寝覚の朔
880円
購入可
300円(税込)
テーマも雰囲気もそれぞれ違う感じのお話を5本収録。
読酌文庫の書く小説がどんなものなのか、試しに手に取ってみたいときに、ちょうどよい本を目指しました。
・両片想いの神の本
・何処かにこんな箱主が
・十日ゑびすのお参り はなり亭で会いましょう番外編
・花咲く頃に君想う
・運命の番になれなくても ~女装男子βは高嶺の花αに恋をする~
文芸バザールで見つけた私の神・白夜つかさ氏。彼女は何と、あたしが小説投稿サイトで連載を始めた頃から作品を追っかけてくれていて、丁寧な感想を贈ってくれる「みしろ」さんだったから驚きだ! 今日初めて文芸バザールに出店し、紙の本を出したあたしのところへ真っ先に来てくれて、最初の購入者にもなってくれた。
そんで、その神と今、あたしはイベント後のお茶を楽しんでいる!
何という幸福!
神とお近づきになれたのも嬉しいし、創作者目線であれこれ話せるのが楽しすぎる!
康史は興味を持ったことは、とことんはまり込んでしまう性分であり、自宅の蔵書は年々増えるばかり。このままでは自宅の床が抜けてしまうかもしれないという懸念と、今はまだ夫婦ともに健康だが、先々を考えるとある程度蔵書を整理しておく必要がある。
しかし、思い入れある蔵書たちを、古書買取で安易に処分するのも味気ない。そんな折、芳子が一箱古本市なる催しを見つけてきた。誰でもその日限りの古本屋が開けるというその催しに、康史が飛びついたのは言うまでもない。参加するのはこれで五回目となる。
絢子と御厨が先行し、その後ろを涼花と樹希が歩くなか、御厨と世間話を交わす。会社員の絢子は土日祝日が休みだが、居酒屋を営む御厨はそういうわけには行かない。土日は稼ぎ時になるだろうし、今は新年会シーズン。自分がお参りに同行するからといって、土日の夜に店を休みにしてもらうなんて、絢子としては気が引ける。
それにしても、客の一人に過ぎない自分が、店主やアルバイトの学生とともに十日ゑびすに行くなんて、不思議なものだと絢子は思った。こんなに親しく付き合うことになるとは、以前なら考えられないことだ。だからこそ、今のこの、ささやかな幸福を感じられる御厨との距離感が心地よく思う。
いっそ彼女をここから攫ってしまえたら良いのに。その気になれば自分だって、花菜に不自由させない生活を与えられるはずだ。それが叶うなら、何を投げ出してもきっと後悔しない。
……
でもそれは、桜子の独りよがりな願いだ。花菜が思い描く彼女自身の幸せは、柊介という伴侶と共に歩む未来にある。彼女にとって私は、親友という立場から変わることはない。
……
頭に浮かぶ下らない考えを振り払い、桜子は自分の想いを封印すると心に誓う。
大丈夫。これまでだって、ずっとそうしてきたのだ。これからだって、同じように隠し続けていくだけだ。