天使に縛られて

天使に縛られて

1,500円(税込)

独りぼっちの少女の儚い物語

ヨーロッパ暗黒時代。ペスト大流行、魔女狩りと、闇呑まれた世界。天から産み落とされた青年は、自らを闇の監獄として、天使とともに旅をする。
そして、何故に神は楽園に赤い実の果樹を植えたのか。
ダークローファンタジー。

プロローグより抜粋

 私の両親は、焼き殺されました。
 私はルーアンに生まれ、少し前に見た魔女“ジャンヌ・ダルク”のように、本来火刑に処されるべきなのは私だったのです。
 両親が言うには、生まれた時からそうだったと言うのですが、私はそれが異端だと知ったのは十歳を過ぎた辺りでした。
 気づいた時には遅く、魔女として連れられそうになる私を逃がした両親は、代わりに魔女を産み、育て、逃がした魔女として処されたのです。
 行く宛てもない私は、暫くの間、時に物乞いをしながらフランスの村から村へとさ迷い歩いていました。
 村人達が、魔女として忌み嫌った私の行動は、普通の人には見えないものが視えること。そして、姿なき者と話をすることです。
 けれど、そういった者達は私には物心付く前から視え、話す事が出来たので、それらが本来見えないものであるかどうかすらわからなかったのです。
 物乞いをしていた十歳の頃に、とある青年に出逢いました。
 青年と共に旅をした事で、本来人間には見えない物の意味や私の力の理由を知る事が出来たのです。
 一四七〇年。私は現在、モン・サン・ミッシェルの修道女として生きています。
 物語と称すべき私の記憶は、一四三五年のことです。
 この二年前に私は両親と死に別れ、一年程物乞いをしながら、フランスの村をさ迷っていました。
 そして、何処か分からない村で、巡礼者の女性に拾われました。
 彼女は私と同じくらいの娘をペストで亡くし、その魂の弔いと忌まわしき流行病の終息を祈る為の巡礼の旅の最中でした。
 私は彼女に、母親を見ていました。そして、まだ甘えたい年頃であった私と、彼女の甘えて欲しい母性本能とが噛み合い、約半年程、彼女と二人でモン・サン・ミッシェルに向けて旅をしていました。
 今思えば、モン・サン・ミッシェルにはとっくに辿り着いてもよかったのでしょうが、悪魔の噂や流行病の噂、危険な場所を避けるなどしていると、どうやら随分迂回してしまっていたようです。
 そのうち、運の悪い事に彼女は旅先で病に侵されてしまい、私を残して帰らぬ人となりました。
 そこは海が近く、彼女がモン・サン・ミッシェルを目指した理由も海が好きだからと語っていたのもあり、海が見える場所に彼女を埋葬しました。
 私は十歳にして、僅か半年程で再び物乞いへと戻ったのです。
 ですが、その時は以前の行く宛ての無い私では無くなっていました。
 彼女との旅で、彼女の意志を受け継ごうと決め、同時に私も彼女のように両親の魂を弔いたいと思っていたのもあり、場所はよく分かっていませんでしたが、独りでモン・サン・ミッシェルへと向うことにしたのです。
 お腹が空いたら、物乞いをしました。慣れているので、苦にはならなかったです。
 眠くなったら、流行病で人の居なくなった家を探し、死体と共に眠りました。時々、親切な人に納屋で寝かせて貰ったりもしました。

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なし
残り在庫
2冊
初回発売日 2025.08.30
最終納品日 2025.08.28

天使に縛られて

1,500円(税込)

作家

鞍馬 榊音

鞍馬 榊音

くらましおん

柿助&榊音

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