BL短編集・おかしくなりそう
冴月希衣
440円
購入可
第一章『私の大好物 side世莉』
「あっ、世莉ちゃーん。また、ここで会えたね。嬉しいなぁ。ね、隣、いい?」
軽やかに響くドアベルの音に重なって、聞き慣れた明るい声が飛んできた。
あーあ、また来たわ。放課後の私の癒やしタイムに乱入してくる、お邪魔虫が。『いい?』と尋ねてるけど、私が返事をする前に、いつも当然のように隣に座るその人は、同じクラスの九鬼律也くん。
私のお気に入り、駅前のレトロな喫茶店で過ごす午後の時間をこの人に邪魔されるようになって、一ヶ月が経つ。
ついでに言うと、『世莉ちゃん』と下の名前で呼ばれるほどの親しい間柄ではない。決して!
だって九鬼くんは、先月転入してきたばかり。
九重世莉さん? うーん、九重さんって呼びにくいから、僕は世莉ちゃんって呼ぶことにするね。
隣の席になった私が自己紹介するなり、彼が勝手に下の名前で呼び始めただけなんだもの。
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