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人魚のはなし

486円(税込)

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新書判/62頁(表紙含)/化粧紙付
民話や伝承をモチーフとした幻想短編集です。


いつともしれないそのとき、どこともしれないその土地。
うつくしい人魚と船乗りが、しあわせに暮らしておりました。
泡と消えない人魚、妖精に愛された詩人、約束に喰らわれた学者。
舞台は灰色の街。すべてがつながる4つの幻想物語。


【目次(収録短編)】
「人魚のはなし」
「詩人のはなし」
「学者のはなし」
「書店のはなし」


【Sample1(「人魚のはなし」本文抜粋)】
 ランプのように籠を提げ、先を歩く小男を、立ちあがった若者はよろめきながら追いかける。松明でもカンテラでもない光が、潮騒に溺れる夜道を仄かに照らし出していた。追いついてきた若者の問いかけるような眼に気づき、小男はからかうように唇を歪める。
「海に漂うものを蒐集するのが趣味でね」
「海に漂うもの?」
「たとえば、難破船から漂ってきた魂、だな」
 若者が身を強張らせた。小男は豪快に笑ってみせる。
「冗談だよ」
 海原を駆けてきた潮風が、鮮やかな朱の髪を掻き回した。風に押されるように、小男は若者の前に出る。若者は小さな背中を追う。
「噂じゃ、あんたの嫁は人魚なんだってな」
 前を見据えたまま声を投げてくる小男に、若者は自慢げに頷いた。
「そうだよ。俺の嫁さんは人魚なのさ」


【Sample2(「詩人のはなし」抜粋本文)】
 その街の印象は灰色だった。
 透きとおっているわけでもなく、霞んでいるわけでもない。曇っているわけでもなく、ぼやけているわけでもない。透明度はひどく高く、彩度だけがひどく低い。そんな灰色が、晴れていても曇っていても、その街を覆っていた。
 私がその街を訪れたのは、春のはじまる、薄ぼんやりとした日のことだ。その街で仕事を見つけたから、その街に住んだ方が何かと都合がいいだろうと思った。それだけのことだ。だから、私は手頃な物件を求めて不動産屋の扉を叩き、こちらの条件を並べ、独身男性の住居に適した部屋の候補を挙げてもらい、では内覧を、という流れで、とある物件に赴くこととなった。
 車の助手席から、私は流れてゆく街並みを見る。ハンドルを握る不動産屋は、中年で、小太りな、青灰の目を持つ男だった。
 この街に住んでしばらく経った今だから言えることだが、不動産屋の目に凝っていた色は、街を包みこむ彩りそのものだった。街にとって、海は近しい位置にあったが、波音が聞こえるほどではなかった。時折、湿った風が潮の香を運んでくるが、街にとって、海とはその程度のものだった。それでも、天候に関係なく、街を覆う色彩が薄ぼんやりとしているのは、多分に海の影響ではあった。大気の中を歩いているにもかかわらず、水の底を泳いでいるように錯覚させるだけの潤いを、海は街にもたらしていた。

詳細情報

納期目安
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購入数制限
なし
残り在庫
6冊
初回発売日 2014.09.21
最終納品日 2015.04.17

人魚のはなし

人魚のはなし

いつともしれないそのとき、どこともしれないその土地。
船乗りに嫁いだ人魚(表題「人魚のはなし」)、妖精に魅いられた詩人の夢、遠い日の約束に喰らわれた学者の夜。すべてがつながる4つの物語。あわいに紡ぐ幻想短編集。


新書判/62頁(表紙含)/化粧紙付

486円(税込)

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作家

南風野さきは

南風野さきは

はえのさきは / 片足靴屋/Sheaghsidhe

No.412


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