手品師と人魚

手品師と人魚

660円(税込)

「まさか人魚さんに出会えるとは」

新書判/76頁(表紙含)/化粧紙付
伝承や民話を素材とした掌編・短編を集めました。
『人魚のはなし』『道化と偽王』と同一世界観の西洋幻想文学っぽいみじかいおはなしあつめです。(この冊子だけでも大丈夫です)
  
いつともしれないそのとき、どこともしれないその土地。
とある海辺の街の祝祭にて。手品師のようなものは人魚を見つけた。はなしかけられたことに驚く人魚と、水底への好奇心に目を輝かせる手品師のようなもの。祝祭にたちあらわれた、とろける境の物語。(表題『手品師と人魚』)
そのほか、嘘をついてもよい日に翻弄される書店員、パンケーキのぷつぷつにおびえることへの対処法、いなくなったあの子を連れ戻そうとするちいさな恋人、などなど。幻想ただよう掌編・短編をあつめました。
 
 
【もくじ】
『手品師と人魚』『手品師と四つ葉』『無題』『人魚の籠』
『栖のはなし』『かたどる』『嘘と箱』『風結びのはなし』
『手品師と人魚』『手品師と亡霊』『ひとり歩きと道連れ』
『蜂蜜とメープル』『閑話』『夜を粧う』
上記14のおはなしを収録しています。
 
【Sample(「閑話」】
 その日、鉄道は遅延となった。駅にて運行予定をしらせる電光掲示板を見上げていると、隣で同様にしているひとがいた。そのひとも同じ境遇であるらしい。待ち時間の暇つぶしにと、そのひとはこんなはなしをしてくれた。
「砂漠のなかに塔がありました。かつての砦にそびえたつ、砂漠を凝らせたような岩でできている塔でした。最上階まで続いているという螺旋階段を、夜とは異質な濃い影のなか、のぼることにしたのです。すると、ついてくるもののけはいがありました。塔をのぼればのぼるほど、そのけはいは密となり、かたちが定かになっていくようでした。前に出ることはなかったので、わたしの影を追っていたのでしょう。どこまで追いかけてくることができるのでしょう。わたしは手すりを乗り越えて、階段という渦の中心たる空洞を落ちていきました。すると、わたしを追うようにして落ちてくるものがあります。塔に満ちる影にとろけて、どのようなかたちをしているのかはわかりません。おそらくは獣のようなものであったのでしょう。愚直であるのか健気であるのか、獣のようなものはわたしの影を追って飛び降りてきたのです。痛い目に遇わせては申し訳なかったので、腕を伸ばし、それを抱き締めました。熟れた桃の果実を指の腹で撫でたような触り心地でした。落下点に近づくにつれて腕のなかにいるものは透きとおっていき、床に降り立ったときには完全なる透明だけがそこにありました。感触だけはあるのに、無いものを抱えているような格好になっていたのです」
 そこで運行再開のしらせが響き渡った。そのひとは星空のような目を細めると、はなしの終幕を告げるように微笑んで、一粒のチョコレートをその口にほうりこんだ。

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初回発売日 2021.04.25
最終納品日 2023.08.25

道化と偽王

道化と偽王

いつともしれないそのとき、どこともしれないその土地。祝祭の夜に見つけた幼子は、母をもとめて彷徨っていた。
泣きやまない幼子を見つけた男の祝祭、亡霊に手招かれる異装の子供、日々を放逐した街と銀皿に供された王冠(表題「道化と偽王」)。飛び石の刻、廻る祝祭。青灰の街を舞台に織り成す四つの物語。あわいに浮かぶ幻想を連ねた短編集。


新書判/66頁(表紙含)/化粧紙付

手品師と人魚

660円(税込)

作家

南風野さきは

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片足靴屋/Sheaghsidhe

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