短編集 星を抱く

草群鶏
600円
購入可
500円(税込)
理系科目が苦手な人間が、宇宙で妄想を広げてみました。
ファンタジーからSFっぽいものまで、いろいろ詰め込んだつもりです。140字掌編10編収録。
宇宙の愛し子
落ちた星をつまみあげる。何度もこぼれ落ちている子だ。震えて泣いている。唇を寄せて、もう一度宇宙の天蓋に浮かべてやる。
強く輝く星、七色の波を纏う星、生きた宝石のような星……華やかで類い希なる色彩を放つ幾億の光に紛れて、あの子の姿はすぐに見えなくなる。
「だめな子ほどかわいいものよね」
「お待たせいたしました、地球ソーダです」
ソーダの青は、地表を覆うという海の色。生命の源に浮かぶバニラアイスには、ちゃちな星とクラシカルスタイルの宇宙飛行士を模したピック。
『天の川航空一一三五便、地球行きをご利用のお客様にご案内いたします……』
最後の乗り継ぎ地、火星港名物、地球ソーダを堪能して、彼女は颯爽と立ち上がった。
七夕ミルキーウェイ
「織姫ちゃん、遅いなあ」
愛牛の鼻をなで、彦星はおっとりとつぶやく。
今夜の天の川は、普段よりも混雑している。
と。
星の水面を蹴立て、真っ赤なスポーツカーがスピンターンのち停車、勝ち気そうな娘が運転席から顔を出した。
「お待たせ! やだ、モーちゃんもつれてきたの? まあいいや、早く乗りなよ」