【コンセプト】
MU『狂犬百景』は四話連作で構成される、MU初の集団劇。東京の街にゾンビではなく狂犬が蔓延したら? と描かれる場所たちは、1.コンビニ、2.製菓会社、3.漫画家の印税御殿、4.動物愛護センター。登場人物やモチーフが離れているけどリンクし裏返る、わたしたちの狂犬百景。
※登場人物、総勢20人
※上演時間2時間20分、上演時休憩込み2時間30分
【主宰より】
もし、ゾンビ映画のように、東京中が狂犬に囲まれてどこにもいけなくなったら、極限と退屈の中、どんな風に過ごすだろう。
という実験を兼ねたエチュード(俳優による即興)を、「地下稽古」と呼び半年くらいやり続けた集大成の作品。いや一次報告かもしれない。
やればやるほど風景は広がり、しかも以外に呑気で笑ったり、逆にハードな目に遭わせたくなったりしながら、ひとつのフレーズに行き着く。
〈自分が間違ってなかったかを「なに」で感じるかなんて、そのひとの自由じゃない?〉
それは現実とも地続きだ。 例えば街中でも。 自分を肯定するための音楽が聴きたくて聴きたくて、みんなイヤホンをつけて歩いてる。
この風景たちは、そのイヤホンから漏れる音楽のようにありたい。
(MU主宰・ハセガワアユム)
※せんだい短編戯曲賞に著作『いつも心だけが追いつかない』最終ノミネート中、脚本・監督で一編参加した池田千尋総監督『ミスターホーム』上映中
【あらすじ】
第一話『犬を拾いに』
コンビニの裏手に荒ぶってるアパートがあり、そこには犬が落ちていた。まさに「落ちている」と感じたコンビニアルバイト・瑞穂は、拾おうか同僚の坂口に相談する。その手には犬に噛まれた痕があった。同じ時刻、コンビニの事務所では店長・青柳の別れた恋人が来訪し、自身の動物愛護団体に「当たった宝くじの何割かを寄付して」と迫っていた。ふたりが飼っていた、謎の高熱で死んだ犬・ベロの意思が、全ての始まりだと彼女は説き始める。
※これ以降の三話から四話のあらすじは、読んでも本編を問題なく楽しめますが、多少のネタバレでも避けたい方は未読での観劇をお勧めします。
第二話『部長は荒野を目指す』
狂犬病の犬が感染・増殖しはじめ、初めて死人が出た。江東区のある地域では戒厳令が敷かれ、製菓会社アマダの社員たちは閉じ込められる。閉鎖し持て余した時間をいいことに、目下の命題である「菓子をとるか」「玩具をとるか」という食玩付き菓子の是非に社内会議が止まらず荒れて行く。営業部長・松崎に決定権が委ねられるが、彼の社内におけるふしだらな女性関係が起因し決断を鈍くさせる。それは結局、彼が誰を本当に好きなのか、を決断することになるからだった・・・。
第三話『漫画の世界』
ギャグ漫画の印税御殿で暮らす田崎ジンの新作は180度方向転換し、東京に蔓延した「犬」をスラップスティックに狩るホラー漫画だった。雑誌編集者・若槻はインタビューで「このリアルは実体験が関係しているのか」と訪ねるが、彼(や彼のアシスタントや担当編集者や友人)の口から漏れるのは、止まらないノワールの入り口だった。悪いことは悪い人たちとしか話せないから、ひどく恐ろしい話をして笑っている。
第四話『賛美歌』
動物愛護センターに保護された犬や猫を希望者に託す「譲渡会」。ボランティアとして友紀奈は関わり、犬を啓蒙する合唱を提案するなど活動していたが、「狂犬病になる前に捨てる」という理由で捨てられる犬が急増し焼け石に水だった。府中の動物愛護センターで起きた大脱走はアニマルテロらしい、という噂。狂犬病が広まったのは製菓会社の会社員が犬に噛まれゾンビになってバラまいた、という噂。噂だらけの濁った言葉が蔓延する中、各話の登場人物たちがリユニオンしていく。
上演記録
2014年11月23日&24日
原宿VACANTにて上演。全3ステージ。
出演:青木友哉、古屋敷悠(MU)、加藤隆浩、大久保千晴、井神沙恵、島崎裕気(くろいぬパレード)、宮崎雄真、森口美香(劇団ORIGINALCOLOR)、加藤なぎさ、沈ゆうこ(アガリスクエンターテイメント)、鍋島久美子、櫻井みず穂(劇団あばば)、富田庸平、菅山望、大塚尚吾、本東地勝(T1project)、植田祥平、田坂秀樹、町田彦衞、とみやまあゆみ
脚本:ハセガワアユム(MU)、※第二話・共著:米内山陽子(チタキヨ/トリコ劇場)
演出:ハセガワアユム(MU)